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本日の頂き物は 『 青い空に魅入られて 』 を運営されております、魔屑…もとい、星屑の空さんから頂きました―!


三部で構成されております内の今日は第一部を。
ちなみに内容は フェイなの+スバティアのダブルデート でございます♪
プロローグ?第四章まであるのですが、誰視点かは各章ごとに横に付け足して頂きました。
なのはさんが色々とフルドライブしてらっしゃいますw
そしてラストにティアにゃんが下剋上!!


あ、そうそう。私の要望で「嫁'sがチンピラに絡まれる」というシーンがあります。
星屑さん曰く 「チンピラがウゼぇと思うかもですが、お許しを」 とのことです。
確かにちょっとうざ、ごほん、しつこかったですがそこは大丈夫。旦那どもが黙っちゃいませんので(笑


星屑の空さん!
「ダブルデート」+「チンピラ?」の要望を取り入れたこんな素敵なお話をありがとうございます!!



では、続きからどうぞ!!












【愛しのジュリエット 1】



 ――  ぷろろーぐ  ―― (スバル視点)



 ピリリリリ!!


 早朝。
 私の部屋に置いてある時計が軽快な電子音を鳴り響かせ、夢の中でティアとあんな事やこんな事をしてる素敵な時間を盛大にぶち壊してくれた。

「わあぁぁぁ!!」

 その音で目覚めた私は悲鳴じみた声と共にがばりと上半身を起こした。上体を起こした姿勢で腕だけをぐっと上に伸ばし体をほぐした。目はまだしょぼしょぼとしてる。
 その間も目覚ましは耳障りな電子音を高らかに鳴らしていた。ベッドから少し離れたところにある机で音を鳴らしてるソイツを私は恨めしそうに睨む。
 起こしてくれたのは感謝してる。だって今日は待ちに待ったダブルデートの日だからね。寝坊なんてしたらティアだけじゃなくて、なのはさんとフェイトさんにも怒られちゃう。だから起こしてくれた事には感謝してる。でも――

「もうちょっとでティア、イッたのにぃぃ!!」

 さっきまで夢の中でのあれこれがどんどんと記憶から消えていく中で、唯一ティアの『好きにしていいよ……』の声だけはしっかりと覚えていた私。思い出すだけで昂奮してくる。オレンジ色の丈の短いワンピースをゆっくりと捲くっていくティアの姿がどんどんと消えていった。
 私ははしごを使わず、ばっと下に床に降り立つと今だ鳴り響く目覚ましをキッと睨みつけた。もちろん恨みを込めてじっとだ。


――覚悟してね、私の目覚まし時計。


 たとえ夢の中だとしてもティアとの素敵な時間をぶち壊してくれたお礼はちゃんとしないといけない。
 目覚ましが置いてある机のそばまで歩み寄ると私はすっと右手を握りしめた。そしてそれをターゲットに向けると息を整える。

「ディバィィ……ン――――」

 右手の拳を強く握り、それからゆっくりと後方に引く。素手だけど構えは魔法を撃つ時と全く同じ。手加減なんかしてあげない。それだけ今の私は怒ってるんだ。もうあんな素敵な夢を――ティアが私に存分に甘えてくれる夢を見ることができないこと知ってるからっ!

「バスタ―――ッ!!」

 私の涙のディバインバスター(素手だけど)は目覚まし時計にクリティカルヒットし、ガチャン! ガチャン! とさっきまで鳴らしていた電子音に負けないくらい盛大な音を鳴り響かせた。そして床にと墜落することでその動きを止めた。もちろん時計としての機能も全部停止した。ベルの機能から時を刻む針の動きまで全部の機能を。

「ん????!! 目ぇ覚めた!!」
「『目ぇ覚めた!!』じゃねぇーよ! てめぇ、スバル! 朝っぱらから暴れてんじゃねーっ!!」

 私の元気な声が響くと同時に入り口のドアが思いきり開いた。そこには寝癖でくしゃくしゃになってる髪を掻きながら不機嫌そうなノーヴェが私に向かって怒鳴っていた。

「何時だと思ってんだよっ!? まだ七時だぞ!? せっかくの休みにこんな早く起こさせるな、バカ!!」
「ご、ごめん、ノーヴェ。ちょっと機嫌が悪くてその……」
「お前より私の方が機嫌悪いって! つーか、また時計ぶっ壊したのかよ!? いい加減にしろよな」

 部屋の隅で木っ端微塵……とまではいかないけど、それなりに大破してる私の十何個目の時計を見ながらノーヴェは言う。その表情は怒りから呆れたものへと変わっていた。
 ちなみに今までの目覚ましも今朝と同じ理由でスクラップになっている。

「だ、だっていいところで目覚ましが鳴るから」
「いいところって……お前、たまってんのか? この間だってかなり長い時間お楽しみだったじゃねーかよ」
「い、いやっ! たまってるとかそういうんじゃなくて――ってこの間!?」
「ティアナが泊まりに来た時だから一週間前だな。あん時はいつにも増して――ってこんなことはどうでもいいんだよ。私が言いたいのは騒ぐならもっと別の場所で、一人で騒いでくれって事! 私まで巻き込むな!」

 散々ノーヴェは私への不満を並べると満足したみたいで自分の部屋へと再び眠るために戻って行った。去り際に『デート、楽しめよ』と付け加えて。

「えへへ。ありがとう、ノーヴェ」

 もう部屋に戻ってしまった姉妹にぽつりお礼を言った私は朝食を食べにリビングに向かって階段を静かに降りていった。
 途中階段に設置されている窓の外を見れば、綺麗に晴れた空が太陽の光を受け輝いていた。
 すごくいい天気。
 きっと今日は素敵な一日になる。

「へへへ。早くティアに逢いたいな」









 ―― 1 ―― (スバル視点)


 よく晴れた日曜日のミッドの中心街は混む。特に首都のクラナガンはミッドの中でも人が多く住む場所で、日曜となればどこに行こうとも人波をかきわけることになる。
 もうそんなのは常識。今さら思うような事じゃない。


 がやがや。がやがや。


 周囲から聞こえる老若男女の声。辺りを見回せばそれこそいろいろな人が楽しそうにしながらあっちへ行ったり、こっちへ来たりと移動しているのをたくさん見かける。
 もちろん、私たち四人も例に漏れることはなくて――

「フェイトちゃん! あそこ見て行こうよ!」
「うん」
「ほら! ティアナとスバルも!」
「は、はい」

 満面の笑みを振りまくなのはさんは、フェイトさんとティアにちょっと興奮気味に話しかけていた。そんななのはさんにフェイトさんは優しく笑みを浮かべ、ティアも「今行きます」と笑顔で答えていた。

「レッツゴー♪」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ、なのはさんっ!」

 童心に帰ったと言っても差支えないなのはさんは軽快な足取りで先を進む。そのあとをティアが慌てて追いかける。でもってティアたちのあとを私とフェイトさんが並んで付いていく。
 言うなればボディガードみたいな感じになっていた。だってそれも仕方がないと思うんだ。ティアもなのはさんもすごく綺麗だし、誰かが護ってあげないとすぐに声を掛けられちゃいそうだもん。
 すっと視線をティアからなのはさんの後ろ姿へと向ける。
 見慣れた教導隊の制服から一変した服装のなのはさんは自身のパーソナルカラーである白を基調とした服装――純白のワンピースを着ていた。それだけでも目を見張るというのに、この人は胸元が大胆に開けたワンピースを着ていた。正直、悩ましいと最初見た時に思った。
 フェイトさん曰く、『今すぐ食べたい』とかなんとか。思わず、私たちがいる前で自重してくださいと念を押しちゃったくらいだ。
 フェイトさんがなのはさんのことを食べたいと思うのと一緒で、私もティアのことを食べたいな、なんて思ってる。思ってるだけだよ。
 私の大切な恋人はなのはさん相手でも輝いてるんだからそう考えたっていいよね。
 すっとまたティアの後ろ姿へと視線を戻す。
 ティアもなのはさんと同じようなワンピースを着ている。淡いオレンジのワンピース。何より丈が短いのがポイントだよね。スパッツを下に穿いてないところがまたいい。最初見た時は『勝負服なんですか?』と聞きそうになったくらいだ。今日のティアは本当に可愛らしい。風が吹いたらと思うと気が気じゃないけどね。

「でも、まあしょうがないと言ったらしょうがないですよね」
「あはは。今日のなのはとティアナ、すごく綺麗で可愛いもんね」

 私が何を言わんとしているかを汲み取ってくれたフェイトさんはしきりに周りに視線を向けていた。
 周りが気になるんじゃなくて威嚇してるんだ。
 私も周りに視線を向ける。すると男の人同士で街に出かけている人はもちろんのこと、彼女連れにも関わらず私たちの方を凝視する男の人がたくさんいた。
 フェイトさんが威嚇しなければ今にもナンパをしてきそうな勢いだ。だけどフェイトさんが普通に過ごしてたらナンパされちゃうんだろうね。
 視線をフェイトさんに向けると、黒のブラウスに水色のクロップドパンツとフェイトさんの完璧なスタイルを惜しげもなく見せるような服装だった。対して私は……日頃着慣れているジャケットにスリットの入ったミニスカート。その下にスパッツを穿くという動きやすい服装だった。

「大丈夫だよ、スバル。私たちに声をかけてくる人なんていないからもっと楽にしていいよ」
「は、はぁ……」
「それより、ちゃんとティアナをエスコートしないとダメだよ? 私たちは四人で遊びに来てるのと同時にそれぞれデートに来てるんだから」

 そう言ってフェイトさんは私ににこりと笑いかけた。
 そうだ。今日はデートに来てるんだ。周りの視線なんて気にしないで存分にティアとイチャイチャするんだ!
 ぐっとガッツポーズを取る。するとフェイトさんは『その意気だよ』と言ってくれた。

「はい!」

 フェイトさんの言葉に勇気をもらった私は、今日のこのあとのことをいろいろと想像しながら、ティアの隣へと駆けて行った。











 ―― 2 ―― (スバル視点)


 ウィンドウショッピングを楽しむ私たち四人は、賑やかな街の中を意気揚々と歩いていた。降り注ぐ暖かな日差しが、ティアを、なのはさんを、フェイトさんをよりいっそう輝かせていた。
 時間を追うごとに増す人波。周囲から感じる視線がどんどん多くなるのを私は感じていた。ティアも感じているのか最初ほどはしゃいだりはしなくなっていた。

「だいぶ歩いたね」
「そうだね。そろそろお昼だしどこかレストランに入る?」
「んーどうしよっか?」

 私とティアの前を歩くなのはさんとフェイトさんの会話が耳に入ってくる。会話だけを聞けば別に何ともないんだけど、二人の歩く様を見れば、やっぱり管理局最強のバカップルの異名が伊達じゃないと感じさせられる。
 それ以上に私とティアに見せつけてるようにしか思えなかった。
 道を行くなのはさんとフェイトさんは、

 ある時は恋人繋ぎ。

 ある時はお互いに腕を組んで。

 ある時はなのはさんがフェイトさんの腕に抱きついたり。

 ミッドの街を歩いている間、なのはさんはフェイトさんから一メートル以内の距離を保っていた。けして離れようとしない。
 周りからの視線が増えてるのはお似合い過ぎる二人が原因なんだ。
 それなのになのはさんたちは視線を浴びてるのも気にならないのか、それとも二人には周りの人たちが見えてないのか、とにかくゴーイング・マイ・ウェイって感じだった。
 同じ恋人を持つ私からしたらはっきり言って――

「羨ましい」
「はぁ? 何が?」

 ラブラブななのはさん、フェイトさんの後ろをティアと並んで歩いてる私はさっきからずっとそんなことばかり思っていた。
 対してティアはやりきれんとばかりの表情。
 たまに「TPOを考えてください」と漏らしてさえいた。

「ティーアー、私たちも手くらい繋ごうよー」

 あんなのを見せつけられてこっちが何もしないなんてできっこない。
 今日は私が積極的に、って話をフェイトさんとしたはずなのにそれが何一つできないでいる。
 私とティアはおしゃべりしてはいるけど手を繋いだりだとかっていう恋人同士のソレは何一つしてない。
 これじゃデートって言わないよね?

「嫌。絶対嫌! なんでこんな街中でアンタと手を繋がなきゃいけないのよ!」

 ティア。それがデートなんだよ。
 腕を組んでムスッとするティアにそう言いたい気持ちを抑え、私はがっくりと肩を落とした。さっきからこんなのばっかりだ。

「ねぇティア」
「何よ」
「私たち、恋人同士なんだよね?」
「さあね」
「うぅ……」

 そっぽを向いたティアに私は涙目で見つめる。

「そんな目をしても無駄よ」
「ティア?……」
「嫌」
「あう……」

 どうして私の恋人はこんなにも素直じゃないんだろうか。
 前を歩く二人へと視線を戻す。
 なのはさんは終始フェイトさんの腕と自分の腕を絡ませ笑っていた。時折、フェイトさんの腕に胸を押し付けてるようにさえ見えるし、フェイトさんの頬に唇を寄せたりもしていた。
 ……これがオフの時のなのはさんなんだ。いくらなんでもフェイトさんとイチャつき過ぎですよ。

「ティアナ、スバル。ここのレストラン入ってみない?」

 一軒のおしゃれなレストランを指差したなのはさん。私とティアは店内を大きな窓ガラスからじっと眺める。
 ちょっと暗い照明の店内。円卓に白いテーブルクロスを引いた落ち着いた大人のレストランという印象を強く受ける。

「どうかな? なんだか美味しそうだと思わない?」
「そうですね。こういう大人の雰囲気のお店って入ったことないので入ってみたいな」

 メニューを眺めながら私は答える。
 ティアと外食する時なんかはファーストフード系のお店が多いし、こういうお店ってマナーとか厳しそうだから入るの躊躇われるんだよね。私から行こうなんて絶対に言えない。

「ティアナは?」
「私もここでいいです」
「じゃ、行こう!」

 なのはさんは元気よく言うと金色の彫刻が施され、またステンドグラスが使われた色鮮やかな扉をくぐった。
 店員に案内された席は二階席のちょうど真ん中の席だった。周りにはタキシードを着た男の人やドレス姿の女の人が優雅に食事を楽しんでいるのを目にする。

「あの……ここってセレブなお店なんじゃ」
「ミッドじゃわりと豪華なお店ではあるよね。でもきちんと正装した人限定ってわけじゃないんだよ。私たちみたいなラフな格好のお客さんも入ってもいいし、子連れで入っても全然問題ないの」

 おしぼりを使って手を拭きながら、なのはさんが説明してくれた。ティアと私は「へえー」と感嘆の声を漏らす。
 仮にそうだとしても私の格好はここには不似合いだね。
 注文して、しばらくはみんなで他愛もない話に興じていた。特に話題があるわけじゃないけど、なのはさんやフェイトさん、ティアとの会話はなんだか新鮮だった。オフの時にこうして会うのも珍しいのだからそう感じるのは当然なのかもしれない。


 ただ一点。非常に気になることがある。


「それでね。この間ヴィヴィオに魔法を見てほしいって言われたんだけど」

 ティアと話をしているなのはさんの右手と二人の様子をニコニコしながら聞いてるフェイトさんの左手がテーブルの上で重なり合っていた。
 なのはさんが下で、フェイトさんが上。ここでも見せつけるかのように恋人繋ぎだった。

「ヴィヴィオ、最近ディバインバスターの練習してるの。いつかティアナにも見てほしいな」
「まだ小学生なのにディバインバスターを教えてらしてるんですか?」
「ううん。ヴィヴィオは独学で学んでるみたい。それか誰かがこっそり教えてたりしてるのかな?」

 そう言ってなのはさんはフェイトさんに微笑みかける。フェイトさんは焦ったように「な、なんのことかな」なんて言っていた。

「なのはだって小学生の時にディバインバスター撃ってたじゃない。別にヴィヴィオが使えるようになっても不思議じゃないよ」
「そーだけど」
「それにスターライトブレイカ―なんて」
「にゃはは。あの時の私は若かったんだよ、フェイトちゃん」
「昔の映像、ずっと前にまた拝見させてもらいましたけど、なのはさんってやっぱり魔法の才能あるんですよ。集束魔法なんて私、まだまだですし」
「才能とかじゃないと思うんだけど。それにティアナだってちゃんとできてるじゃない。そんな卑屈に考えることないよ? ちゃんとできてるから自信持って!」

 もちろんスバルもね、と私に声をかけてくれた。

「ありがとうございます、なのはさん」

 それからまた四人で他愛もない話を始めると注文した料理が運ばれてきた。
 ことり、ことりと円卓に料理が並べられる。
 私とティアがリゾット。もちろん二人とも別々の味を頼んでいる。なのはさんとフェイトさんがパスタでこっちもそれぞれ別々の味を頼んでいた。

「ごゆっくりどうぞ」

 店員が一礼するとそそくさと階下へと降りていった。

「それじゃ、食べよっか」
「だね」
「いただきます」
「いただきまーす」

 リゾットを一口食べ、じっくりと味わう。こんなに美味しいリゾットは初めてだった。ティアも同じ感想なのか、思いのほか驚いた表情をしてる。

「美味しいね、ティア」
「ホント、美味しいわ」

 自然とリゾットを掬うスプーンのスピードが速くなってしまう。音をたてないように、極力優雅に食べるよう心がけてはいるんだけど、やっぱり美味しいものを前にすると……止まらない。

「スバル。もっと落ち着いて食べなさいよ!」
「だ、だって美味しいんだもん」
「急いで食べることないよ。時間、いっぱいあるし、それに足りなかったらまた注文してもいいからね。スバルとティアナは支払いのこと考えないでいいよ。今日は全部フェイトちゃんのおごりだから」
「え? いいんですか!?」
「もちろん。私が言うんだもん」

 笑顔で話すなのはさんの隣に座るフェイトさんは、ちらりとポーチの中から財布を取り出し、中身を確認していた。
 ……聞かされてなかったんだ。なのはさんもなんて無茶を。

「いいでしょ、フェイトちゃん?」
「あ、うん。全然おっけーだよ。スバルもティアナも、もちろんなのはも遠慮しないで食べてね」
「フェイトさん……」

 ティアはフェイトさんに哀憐の眼差しを送っていた。

「ホントに大丈夫だからね。ティアナも遠慮しないでいいよ」
「ほら。フェイトちゃんもそう言ってるわけだし、たくさん食べよ」
「じ、じゃお言葉に甘えて、と言ってもそんなにたくさん食べるわけじゃないんですけどね。どっちかっていうとこっちの」

 そう言って私の方へと顔を向けるティア。
 言いたいこと、わかってるからその先は言わないでほしいな。

「にゃはは。スバルも遠慮しないでいいからね」
「は、はい」

 なのはさんに言われてると本当にたくさん食べてもいいんじゃないかって思っちゃう。フェイトさん、ごめんなさい……!









 ―― 3 ―― (スバル視点)


 高級レストランの料理に舌鼓を打っていた私とティア。なんだかんだ言ってティアだって結構食べてる。
 だけどそれも終わりを迎えることになるなんて考えもしなかった。いや、油断していたというべきかもしれない。

「フェイトちゃん。あーん」

 優雅に、お淑やかに、華麗に食事をしていた私とティアの手がパタリとその一言で止まった。
 驚き、ティアと顔を見合わせてしまう。

「な、なのは。みんなが見てるよ?」
「なのはは見せつけるつもりなんだけど。……ダメ?」
「うっ……だ、ダメとは言ってないけど」

 フォークにくるくると巻いたパスタをフェイトさんの口元に寄せるなのはさん。その表情はすごく笑顔だった。対してフェイトさんは羞恥からか若干顔が赤い。幸い周りのお客さんからは…………ってじっと見られてるよね。うん。あれだけはっきりと「あーん」なんて言えば当然だよね。

「フェイトちゃん、あーん♪」
「……あ、あーん」

 可愛らしく再度言ったなのはさんに何かを感じ取ったのか、フェイトさんは大人しく口を開け、なのはさんから運ばれてくるパスタをパクリと食べた。

「美味しい?」
「うん、美味しいよ」
「どんな味がする?」
「なのはの味、かな」

 朱に染まった顔そのままにフェイトさんはなのはさんにそう言って笑いかけると、なのはさんもさすがにこれは予想外だったのか ぼんっ と顔を赤くした。

(……スバル。私、すごく帰りたい)

 ティアからの思念通話に私も(奇遇だね。私もちょっと居づらいんだ)と返した。
 一応注文した料理は全部食べてあるから、お店の人に失礼はない。それにもうお腹いっぱいで何も食べる気しなくなっちゃった。

「あれ? スバルとティアナはもういいの?」
「は、はい……。結構食べちゃいましたから」
「そうなの?」
「遠慮しないでいいのに。スバル、アイスもあるよ」
「い、いえ。もう十分糖分は摂りましたから……あはは」

 今のなのはさんたちのやり取りで十分糖分摂取しましたから。ホントにごちそうさまです。

「私たちもそろそろ」
「あ、うん。そうだね」
「はい。フェイトちゃん、あーん」
「……なのは?」
「だって残しちゃうの失礼でしょ?」
「確かにその通りだけど……あのさ、もしかしてこれ全部私が食べるの?」
「ううん。私も食べるよ。だけどお互い食べさせっこでだけど」


『…………………………』


 無邪気な笑顔そのままのなのはさんに、私とティアはもちろん、フェイトさんも固まってしまった。気付けば周りのテーブルでしきりに注文を取ってる店員さんが、「ブラックはもう少々お待ち下さい」とぺこぺこと頭を下げるのが見えた。
 私も注文したかったな、ブラック。

「な、なのはっ! 普通に食べない? ティアナとスバルもいるわけだし」
「フェイトちゃんは私があーんってしてあげたの、食べてくれないの……? それともなのはの味がする料理は、嫌い……?」

 しょんぼりとしてしまったなのはさん。言ってることはおかしいけど、なんだか見ていてすごく可哀想だった。いや、可愛いとも言うかもしれないけど。
 こんな表情を目の前でされてフェイトさんが黙ってるはずもなく、ぎゅっとなのはさんの肩に手を添えると「食べるよ。なのはがあーんしてくれるものなら何でも!」と力強く言った。

「フェイトちゃん……」
「なのは……」

 そしてフェイトさんは徐々になのはさんの肩を抱き寄せていく。次第に近くなっていくなのはさんとフェイトさんの唇。
 そして――――


「時と場所を考えてくださいッ!」


 キスをする寸でのところでティアが顔を真っ赤にしながら止めに入った。我に返ったフェイトさんが慌ててなのはさんと距離を取ると「そ、そうだよねっ」と乾いた笑いを浮かべた。対してなのはさんは、


 ――もうちょっとだったのに……


 とでも言いたげな表情だった。ティアに向けられる視線はかつて六課にいた頃の模擬戦でティアを撃墜した時のもの。なのはさん、キレてる……?

「コホン……っ。さ、なのは、早く食べちゃお。二人を待たせるのは悪いよ」
「う、うん。そうだよね」
「ほら、なのは、あーん」
「ふぇ?」
「だから、あーん」

 さっきなのはさんがしたようにパスタをくるくると巻きつけたフォークをなのはさんの口元に寄せるフェイトさん。
 ティアが言ったこと、まさか理解してない!?

「あの、フェイトさん? 今、私時と場所を考えてって」
「だからキスはやめたよ?」
「それは?」
「なのはがしてほしそうだったから」



 ダメだ、この上官二人は――



 きっとティアも同じことを考えてただろうね。
 結局残った料理をなのはさんとフェイトさんは食べさせっこして完食した。その間、私とティアはなのはさんたちを直視しないでそっぽを向いていた。
 これからは極力なのはさんとフェイトさんが揃った時は食事に行かないようにしないと。

「ありがとうございました。またお越しくださいませ」

 レジの店員が苦笑いを隠さずに言ったのを、支払いを済ませたフェイトさんも苦笑して「ありがとう」と返した。お互いに気まずかったのだろう。無論、私もティアもレストランにいる人たちから視線を浴びて気が気じゃなかった。ただなのはさん一人だけが幸せそうに微笑んでいる。

「美味しかったね。ここ」
「そ、そうですね。もう食べた味なんて残ってませんけど」

 店外に出たなのはさんにティアがそう話しているのを耳にした。きっとティアの口の中は砂糖でいっぱいになってるよね。

「フェイトさん、ごちそうさまです」
「ううん。満足してくれたのならいいんだ」
「はい! すごく美味しかったです」
「よかった。またみんなで来ようね」
「は……はい」

 なるべく次はストッパーを――はやてさんかヴィヴィオも一緒にお願いします。

「これからどこに行こっか?」

 昼下がりのミッドの通り。
 行き交う人々の波は少し穏やかになったけど、それでも人通りが多いことに変わりはなくて。ここからだとゲーセンがあるわけでもないし、どこか遊べるところがあるわけでもなかった。

「またウィンドウショッピング? 私はフェイトちゃんといられるのならどこへでも行くけど」
「ありがとう、なのは」
「うん」

 ……そんなにフェイトさんとイチャイチャしたいんですか、なのはさん。

「私も特に行きたいところはないです。このまま街を見て歩くのでも十分楽しいと思いますし」
「だよね。さすがティアナ。わかってる」
「ど、どうも」
「でも、時と場所を考えてなんてもう言わないでよね?」

 根に持ってるんだ。
 ティアは顔を引きつらせ、「すみません」と言うと「わかってくれればいいの」となのはさんは笑った。
 その後の私たちは、午前中同様、いろいろなお店に立ち寄っては手に取ってみたり、可愛いのがあれば買ったりとウィンドウショッピングを楽しんでいた。気付けば手に持つ紙袋の量は増えていった。

「結局たくさん買っちゃったね」
「久しぶりに街に出たからね。それにみんなと買い物するとやっぱりこうなっちゃうよ」
「あはは……私もこんないっぱい買っちゃいました」
「ティアナも結構買ってたよね」
「はい……ちょっと欲しいものが見つかったりとで余計な出費が」

 各々が買い物袋の中を覗きこんでは苦笑して言う。後悔はしてないけど、結構な量だ。これからゲーセンに行こうかなとか考えてた私の計画は儚く散っちゃった。
 買い物を一通りしてしまった私たちが向かったのはクラナガンの駅前――噴水があるところだった。

「なのは、何か飲み物買ってくるよ」
「あ、いいよ。私も一緒に」
「ううん。なのは、疲れてるでしょ? すぐに買ってくるから待ってて」

 フェイトさんがなのはさんにそう言うと私に「スバルはおいで」と言ってきた。

「私ですか?」
「そう。ちょっとフェイトさんとお話しようか」
「……は、はぁ。えっとじゃとりあえず、ティア」
「とりあえずって何よ」
「何か飲みたいのある?」

 飲み物を買いに行くのだからティアと私の分を買って行ってあげようと思ったので聞いてみた。

「んーじゃ、クリームソーダで」
「了解」
「じゃ、行こうかスバル」
「はい」

 ティアとなのはさんは噴水の前にあるベンチに腰かけ私たちを待つことになった。
 私はフェイトさんの隣を並んで歩き、少し離れたところにある自販機へと向かう。

「今日のスバル、全然ダメだよ」
「どういうことですか?」
「ティアナをエスコートしてない。それに手も握ってないでしょ?」
「私にお話って……お説教だったんですね」
「うん。だってスバルもティアナも全然恋人同士らしくないんだもん。もっと手を握るとかしないと!」

 あれだけ人前でイチャイチャされたらできませんよ。

「デートも後ちょっとだけ挽回しないとダメだよ!」
「は、はい」

 お説教を食らいながらも飲み物を買い、ティアたちのところに戻った私とフェイトさん。
 これがいけなかったと、すぐに後悔した。
 フェイトさんがいなくなったことで、なのはさんとティアの周りには変な男たちが集まっていた。

「フェイトさん! ――ってあれ!?」

 隣にいたはずのフェイトさんはいつの間にか男たちのところへと駆けだしていた。私も慌ててその後を追った。








 ―― 4 ―― (ティアナ視点)


 スバルとフェイトさんが飲み物を買いに行ってからすぐにそいつらはやってきた。あのレストランを出た時からずっとついて来てたやつらだ。
 四人組のいかにもチンピラといった雰囲気が前面に醸し出されてる。ダボダボのシャツに、だらしなくずり落ちたズボン。若い男の人のファッションで言うと……腰パン、だったかしら? 何がかっこいいのかわからない。ただ私から見たらだらしない、そのくらいにしか映らなかった。

「――君たち、可愛いね。さっきのあの二人は?」
「ねえ、俺らと遊びに行かない? みんなで楽しいことしようよ」

 チンピラのテンプレみたいな発言ね。
 にやにやと何かを企んでるような笑み。こんな人たちってホントにいるのね。

「ねえ、君、執務官やってる子でしょ? 確か……ティアナちゃん?」

 細身で金髪の男が馴れ馴れしく言ってきた。
 アンタに“ちゃん”づけされる覚えなんてない。

「こっちは美人教導官様だぜ? こんな美人になら調教されてもいいかな、俺」
「死ねよ、お前。こういう女は侍らすのがいいんだろが」

 さっきから不愉快になる会話ばかりを続けるコイツらに私は怒りが込み上げてきた。

「私たち連れがいるので」

 対してなのはさんはあくまで冷静に受け答えをする。こういう状況に慣れてるのかしら……?

「連れってさっきの髪金巨乳のことか? それともその隣にいた冴えないボーイッシュの子?」
「あんなのより俺らと遊んだ方がぜってー楽しいって。いろいろと気持ちいいと思うぜ?」
「お前、下心見え過ぎ。見ろ、引かれてるじゃねーか」
「ん? 俺のビックマグナムを見ればすぐに喰いついてくるぜ? ひゃっはっはっは!」

 コイツら最低だ。
 心底そう思った。なのはさんも不愉快なのか、目の前いる男の人たちを睨みつけている。

「おうおう。そんな目で睨まなくてもいいじゃんよ。俺ら、ただ遊びに誘ってるだけだからさ。どう? 俺らとこれからカラオケでも」

 なのはさんにそう尋ねるとなのはさんはにっこりと満面の笑みを浮かべた。それは周りの人から見たら天使の笑顔と思ってしまうほど可憐な笑み。人を魅了するような笑みだった。
 だけどその真意を知っている人から見たらこの場から離れたくて仕方がなくなる。
 特に私なんかは。

「お断りなの。私もティアナもあなたたちよりも素敵な人とデート中だから」
「まーたツレないこといってぇー本当は俺らと一緒に遊びたいんだろ? はっきりそう言いなよ」
「お・こ・と・わ・り♪ あ、そうそう。せっかくだから一つ忠告してあげるね」
「忠告? んだよ、それ」
「もうそろそろ私の恋人が戻ってくるからあなたたち、早くどこかに逃げた方がいいよ? フェイトちゃん、私が男の人と話をしてるとすっごく機嫌悪くなっちゃうの」

 さらりとそんな事を言うなのはさん。いろいろとぶっ飛んでる気がする。普通に恋人って公言してる辺りはさすがだと思う。
 だけど男の人たちは一回顔を見合わせ合うと嫌らしく嗤った。

「じゃー戻ってくる前に連れてくっきゃないっしょ?」
「こっちは四人。そっちは二人。いくらなんでも抵抗できないべ?」
「アンタたち、下衆ね」
「ティアナちゃんって本当にツンデレちゃんなんだね、マジそそるわ」

 ……コイツら。

「まーいい。とにかく教導官と執務官はもらっていくとすっか」

 そう言って私へと手を伸ばす。それを思いきり叩き落した。

「触らないで!」
「ンだと、このアマァ」

 チンピラにお似合いの台詞を吐くとその男の人は私に向かって拳を繰り出してきた。避けるのは容易いパンチだった。
 だけど――――


「アァっ!?」


 突きだした拳が私に届くことはなく、私も避けることもなかった。
 私の目の前にその人が――スバルが立っていたからだ。


「何してるんだ……っ!」
「て、てめぇ」
「ティアに……私の恋人に……手を出すなッ!!」

 スバルの放った一言が私の前に立っていたチンピラを黙らせた。
 私も黙っちゃったけど。
 いくらなんでも言い過ぎでしょうに……いや、嬉しくないなんて言ってないのよ? ただ時と場所を――

「こンのっ!」
「はい。ストップ」

 再度振り上げた拳をスバルよりも前に現われていたフェイトさんが止めた。
 ちらりとなのはさんの前に立っていたチンピラを見る。すると泡を吹いて昏倒していた。
 ……何をしたんですか、フェイトさん。

「て、てめえ! 放し」
「なのはに汚い言葉を使ったよね? なのはを遊びに誘ったよね? なのはに色目を使ったよね? なのはとおしゃべりしたよね? 他にもなのはを傷つけるようなことしたよね? ついでに私の部下に手を上げたよね?」

 静かに、一定の口調で続けるフェイトさんは、パチパチと体中から放電していた。なのはさんの言った通り相当怒ってるようだった。
 それからフェイトさん。私は「ついで」って酷くないですか……?

「放せっ!」
「ダメだ。君もそこで寝てる彼らも警察に引き渡す」
「ああ!?」
「気付いてないの? 君のポケットから麻薬が入った袋見えてるんだよ?」
「な、バカな!? ヤクは靴下の中に」
「そっか。靴下の中なんだ」
「て、てめぇ! 騙しやがっ……」

 喚くチンピラにフェイトさんが首筋に一撃を喰らわせるとがくりと気を失ってしまった。

「はい、警察に連絡っと。大丈夫、スバル?」
「あ、はい」

 フェイトさんは目の前に立つスバルに声をかける。スバルは肩で息をしたまま「なんともないですよ」と返した。

「まさか反応に遅れたからってウィングロードを使うとは思わなかったよ。だからこそティアナの前に立てたんだろうけど」
「ウィングロード……? アンタ街中で」

 だから私の前にいきなり現れたのね。納得。

「だってティアが襲われてたからなんとかしなくちゃって思って」

 こちらにと振り返ったスバルはまだ心配そうな表情でこっちを見ていた。

「別に助けてもらわなくても私となのはさんだけで十分追っ払えたわ」
「そ、そうだよね。ティア、強いもんね」
「ま。一応お礼は言ってあげる。――ありがとう、スバル」

 かっこよかったわよ、とまでは言わない。恥ずかしくて言えないし、言ったらコイツは調子に乗るだろうから。
 それから、はっきりと「恋人」って言ってくれたのは驚きだったけど、嬉しかったのは内緒にしておこうと思う。

「う、うん! どういたしまして!」

 スバルは本当に嬉しそうに笑った。それがなんだか可愛くて私もクスリと笑みを零す。

「フェイトちゃぁぁんっ!」

 しかしてすぐに隣から涙声でなのはさんがフェイトさんに抱きついた。それをフェイトさんが優しく抱きとめる。
 一体何を……?

「恐かったよぉ! どうしてなのはを一人にするのっ!」
「ご、ごめん、なのは! で、でもでもちゃんと助けに来たし、それに」
「遅過ぎだよ! バカ! 私もティアナも変な事言われて傷ついたんだよ!!」
「そ、そんなぁ!?」
「それ本当、ティア? 変な事言われたの?」
「いや、まー……変な事言われた気もするけど。でも傷ついてはいないわよ? 聞き流してたし、それになのはさんだって」


(――ティアナ。これ以上私がフェイトちゃんに甘えるのを邪魔するとひどいことになるよ?)


 ぞわりと背筋が凍るような声。念話を使ってきたなのはさんを――フェイトさんの胸の中に顔をちょっとだけこちらに向けているなのはさんに視線を向けると先ほど同様にニコニコしていた。


(私の言ってること、わかるよね?)


 コクリと頷く。
 やっぱり私、なのはさんと相性悪いかも。


「なのはだって何? その先を教えてよ!」
「え、えっと私よりもなのはさんの方が酷い事言われてた気が……」
「それ本当!? なのはっ。大丈夫?」
「ううん。大丈夫じゃない……すごく傷ついた」
「あわわ……と、とりあえず今は私が抱きしめててあげるから、ね? 落ち着いたらいっぱいいっぱい慰めてあげる!」
「……うん」

 そう言ってなのはさんはフェイトさんに抱かれたままでいた。
 絶対に見せつけられてる。今日何度もそんな視線を感じた。

 ――ティアナもまだまだだね

 そう言いたげな視線を何度も。
 悔しいと言ったら悔しい。私だってスバルと……イチャイチャとまではいかなくても手くらいは握りたい。でも日頃の私がそうするのってやっぱり違和感があって……

「ティア、平気? 何だか深刻そうな顔してるけど」
「あ、別にっ! 何でもないわよ! 気にしないで!」
「う、うん。ティアがそう言うなら」

 先ほどの噴水とは違う噴水の前に腰かけた私たち。なのはさんとフェイトさんはさっきのところでたぶんイチャついてる。それが見たくなくて私たちは移動していた。

「今日は楽しかったね」
「そうね。久しぶりに休みを満喫したって感じかしら」
「デートじゃなくてお出かけ、だね」
「……そうね」

 恋人同士らしいことしてないからね。
 隣を座るスバルが落ち込んでるように見えてちょっと可哀想になった。
 もっと私が素直になればいいのだろうけど、やっぱり抵抗が。

「もうすぐ陽が落ちるね」
「そうね」

 二人して空を見上げる。クラナガンの駅から見える空は私の髪と着ているワンピースのようなオレンジ色をしていた。綺麗な夕焼けだった。

「ティアナ、スバル」

 後ろから声を掛けられて振り返る。するとなのはさんとフェイトさんが私たちの荷物を持って立っていた。

「今日はもう解散かな? 日も暮れてきたし、家でヴィヴィオ待ってるから」
「そうですね。私も明日の任務の準備とかもありますし」

 なのはさんと言葉を交わすスバルの後ろ姿は残念そうだった。

「ティアナ。私たちはもう一週間あとだからゆっくり体、休めてね」
「はい。フェイトさんこそ、家でハッスルしちゃダメですよ」
「なのはが求めてきたらハッスルしちゃうよ」

 そういう意味じゃないんですけど。ヴィヴィオのパパとして、って言いたかったのにこの人は……。

「ははは……ま、まぁほどほどにですよ」
「うん。ほどほどに、ね」

 絶対無理させる気がする。そんな笑みをフェイトさんはしてるもの。

「ティアナ。私の勝ちだね」

 勝ち誇ったようななのはさんの笑み。隣に立つフェイトさんは「何に勝ったの?」と聞いている。私にだってわからない。ただ予想はできるわけで。


 ――私たちの方が恋人らしかった


 とか言いたいんでしょう? 別に私はなのはさんたちと競ってるわけじゃないわよ。こういうところを見るととなのはさんはまだ全然子供だと思う。

「じゃ、またね、ティアナ、スバル」
「はい。なのはさんもフェイトさんもまたいずれ」
「うん」

 そう言葉を交わすとなのはさんとフェイトさんは私たちに一度笑いかけたのち、帰宅の途へと着いた。たぶんこれからタクシーを拾うのね。


 ――『私の勝ちだね』


 ……負けっぱなしっていうのは癪よね。
 脳裏によみがえる数分前の会話。なのはさんに負け続けるというのは、ちょっといい気分じゃないわね。
 一回くらい見返してやりたいわ。

「スバル」
「? 私たちも帰る?」
「……さっきは本当にありがとう」
「え?」
「助けてくれた時のことよ。かっこよかったわ。見なおした」
「え? あ、て、ティア?」
「それでね。ちゃんとお礼がしたいなって思って。ただぶっきらぼうに「ありがとう」じゃ失礼だと思ったのよ」
「べ、別にそんな、当然のことをしたまでだよ」

 当然のこと、か。
 そう言われると嬉しい。

「お礼、したいのいいでしょ?」
「あ、うん……ティアがそう言うならいいけど」

 これでスバルからの許可はもらった後は――


(なのはさん。ちょっといいですか?)


 思念通話でなのはさんに呼びかける。すると(どうしたの?)と返しながら私たちの方を振り返った。と、その時を見計らった私は、両手をスバルの頬に添える。

「え? ティア!?」
「目、閉じて」
「あ、え、え!?」
「いいから、早く!」

 語気を強め言うとスバルはギュッと目を閉じた。それから私はなのはさんにまた念話で話しかける。


(私たちの勝ちです)


(な、何言って――――!?)



「ん……」


 なのはさんが思念通話内で慌てるのを無理矢理遮断し、私はスバルの顔を引きよせ唇を交わした。
 衆人環視の中、二十代にもなる女性二人が駅前で堂々とキス。
 これが恋人同士じゃなかったらなんて言うんでしょうね、なのはさん。


 ちらりと横目でなのはさんを見やる。唖然とし、固まるなのはさんに私は再度念話で、


(私とスバルの方が恋人同士に見えますよ)


 と、告げた。勝利宣言だ。
 ふふふ。あんなに悔しそうなのはさんを見るの初めてだわ。いい気味。
 夕暮れに染まる街の中、私とスバルは触れるだけのキスをしばらく続けていた。
 それは今日一日でできなかった恋人同士のあれやこれやを一気に清算したかのような充実感があり、幸福感もあった。
 たまには大胆に行くってのもアリかもね。
 初めてのダブルデートだったけど、最後の最後でスバルと恋人らしいことできてよかったわ――――








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2010.08.25 / Top↑
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